千の夜をあなたと【完】
数分後。
イーヴはコンコンととある部屋の扉をノックした。
しばしの沈黙の後、キィと扉が開かれる。
扉の向こうから顔を出した侍女は、イーヴの顔を見るなりヒィと青ざめた。
「なんだ? 夫が妻の部屋に来たのに、まるで妖怪でも見たような顔だな」
「……っ、イ、イーヴ様……っ」
「ディナリアはいるか?」
イーヴはうっすら笑い、言った。
侍女は慌ててイーヴを部屋の中へと通し、部屋の奥へと駆けこんだ。
やがて、侍女に付き添われてディナリアが姿を現した。
そのお腹は少し膨れ、妊娠していることは明らかだ。
ディナリアは青ざめ、憔悴しきった顔で俯いている。
「……ひとつ、聞きたいことがある」
イーヴはディナリアの向かいに座り、脚を組んだ。
青灰の瞳がじっとディナリアを見つめる。
「……指一本触れてない状態でどうやったら妊娠するのか、教えてくれ」