千の夜をあなたと【完】
……その言葉に。
ディナリアは両手で顔を覆い、わっと泣き出した。
侍女が慌ててその背を抱き、なだめる。
イーヴは冷ややかな瞳でそれを眺めながら、口を開いた。
「ひょっとしてお前は聖母マリアの生まれ変わりか? ……であればそうなってもおかしくはないな」
「……」
「もしくは自分自身で増殖する能力でも持っているのか? ……であれば、こんなところにいないでアカデミーにでも行って調べてもらった方がいい」
イーヴはため息交じりに言った。
――――そう。
イーヴは文字通り、一度も妻に触れたことはない。
なのに妊娠、となれば……
「……相手は誰だ? どこぞの御曹司か?」
「……っ」
「それともこの屋敷の者か? ……誰だ? 言え」
イーヴの追及に、ディナリアはしばらく肩を震わせた後、小声で口を開いた。