千の夜をあなたと【完】
「お前は馬鹿で、俺は天才。前からそうだろ? 何を今更傷つくことがある?」
「……っ」
「別にいいんじゃないの? 俺が天才な分、お前は馬鹿でも」
イーヴは涙目になったレティにそっと手を伸ばした。
レティの栗色の髪をそっと撫で、レティの瞳を見つめる。
……いつになく優しい、青灰色の瞳。
その目に吸い寄せられるようにレティはイーヴを見つめた。
「お前が誰に何を食わせようとも、俺が治してやるよ。……でも今度は食わせる前に俺に聞きに来ること。わかった?」
イーヴはいつもの冷静な声で言う。
イーヴの言葉に、レティは目頭が熱くなるのを感じた。
どうやらイーヴはレティを慰めようとしてくれたらしい。
――――非常に屈折した、分かりにくい表現だが。
レティはこくりと頷き、ぐいと目を拭った。