千の夜をあなたと【完】
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――――夕闇の中。
その男は袋から取り出した短剣をじっと見つめていた。
その瞳は蒼く、万年雪のように冴え冴えとしている。
「……」
既に短剣は男の体と一体化したかのように、男の手の中で鋭い輝きを放っている。
――――『氷眼の狂剣士』。
いつの頃からか、男は巷でそう呼ばれるようになっていた。
別に自分が望んだわけではないのだが……。
短剣の刃に、男の蒼い眼が映る。
その眼にしだいに広がっていく、昏い憎しみ。
男はその形の良い唇を歪めて嗤った。
「そろそろ、始めるか……」
<***>