千の夜をあなたと【完】
5.リュシアンの誓い
<side.リュシアン>
秋風が街路樹を揺らして吹きすぎていく。
リュシアンはコートの前を寄せ、辺りを見回した。
……このあたりにあると思ったのだが……。
と、目当ての家を発見し、リュシアンは足早に歩み寄った。
門をくぐり、玄関のアプローチを抜け、コンコンと軽くドアをノックする。
「はい?」
声とともに髪を後ろで結った女性が姿を見せた。
女性はリュシアンの顔を見るなり、驚いたように目を見開いた。
「リュ、リュシアン様!?」
「久しぶりだな。ケネスはいるか?」
女性はしばし呆然とリュシアンを見上げていたが、すぐに踵を返してリュシアンを中へと案内した。
そのまま奥の部屋へと駆け込む。
やがて奥から出てきたのは痩せ形の白髪交じりの男だった。
男はリュシアンを見るなり、目を剥いた。