千の夜をあなたと【完】



そして数分後。

リュシアンは衝撃のあまり、口元を押さえてその場に立ち尽くしていた。

父が死んだというのはわかっていた。

けれどまさか、レティまでもが死んでいたとは思ってもみなかった。


栗色の髪の、活発な妹。

リュシアンとは異母兄妹だったが、気が合い、昔からよく一緒に遊んでいた。

そのレティが……。

リュシアンは絶句した。


――――あの夜。

リュシアンは父の部屋から続く書斎の中にいた。

カレッジの宿題のため、本を借りようと父の書斎に入っていた。

しかし、書斎を出ようとしたところで父の絶叫を聞き……

リュシアンは書斎から部屋の中を伺った。

そのとき、あの亜麻色の髪の男の姿が映った。

男はリュシアンに気付いた様子もなく、部屋を出て行った。


――――しかし。

男が父の部屋を出る瞬間、エスターの従者のエリオットが廊下を通りかかった。

二人は何かを目配せするかのように合図を交わした。



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