千の夜をあなたと【完】
<side.リュシアン>
――――ケネスの屋敷の一角。
開け放たれた窓から港町特有の潮の香りが部屋に入ってくる。
リュシアンは風に揺れる蝋燭の灯りの下、ケネスからの報告を受けていた。
「リュシアン様。どうやら今、『諸島の王』の一行がコルウィンに滞在しているようです」
「コルウィンか。確か、クロフト男爵が治めている街だな?」
「はい。『諸島の王』は近年、ウェールズとの貿易に力を入れています。恐らく、『諸島の王』はクロフト男爵とも商談をすると思われます」
ケネスは真面目な顔で言う。
リュシアンは首を傾げた。
「だが……それが、例の件に関係あるのか?」
と言ったリュシアンに。
ケネスはしばし考えた後、小声で言った。
「先日、リュシアン様のお話をお伺いしてから、私も『亜麻色の髪の男』について調べてみたのですが……。恐らくその男は『氷眼の狂剣士』ではないかと思われます」
「……なんだって?」