千の夜をあなたと【完】
リュシアンは驚きのあまり背を仰け反らせた。
『氷眼の狂剣士』についてはリュシアンもティンズベリーにいた頃、噂を聞いたことがある。
――――残虐非道な凄腕の剣士。
目を見開いたリュシアンにケネスは続ける。
「外見の特徴といい、短剣を武器にしていることといい……確実なことはまだ言えませんが、確かめてみる価値はあるかと」
「なるほどな……」
ふむとリュシアンは頷いた。
まずは怪しげなところから当たっていくしかない。
リュシアンはケネスに向き直り、口を開いた。
「ではクロフト男爵に、もし『諸島の王』と会う機会があれば同席したいと伝えておいてくれ。……オレの名は出さず、あくまでケネスの名前で、な」
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