千の夜をあなたと【完】




セレナは喘ぎながら、ぼうっとする頭の片隅で考えた。

自分は今、どのくらい『色気』がついたのだろうか。

セレナは熱で朦朧とする意識の中、口を開いた。


「エスター、さま……」

「……何でしょうか、セレナ?」

「あの……。どのくらい色気を身に付ければ、ケヴィン様は私を見てくださるのでしょうか……」


――――それは、純粋な質問だった。

少なくともセレナにとっては。


しかしその言葉を聞いた瞬間、エスターの顔が一気に強張った。

そのアンバーの瞳に鋭い怒りがよぎる。


「……セレナ、あなたは……」


エスターは動きを止め、じっとセレナを見下ろした。

――――エスターの瞳によぎる、怒りと切なさ。

セレナはその視線に息を飲んだ。


「……事ここに至っても、まだ気付いてないのですか? この行為の意味が?」

「……え?」


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