千の夜をあなたと【完】
9月末。
レティはライナスとともにオーラフに呼び出された。
ちなみに3人が身を寄せているのは街の中心にある宿屋で、レティはここに来てから一週間、ライナスとともにリュシアンを探していた。
しかし結果は芳しくなく、それらしい人物の情報もない。
と、少し意気消沈していたところに、オーラフからの呼び出しがあった。
「クロフト男爵とやらが会食にと誘ってきた。お前達もぜひ一緒にと言われているが、どうする?」
オーラフの言葉にレティは首を傾げた。
クロフト男爵はコルウィンを治めている人物で、レティも昔、舞踏会などの席で幾度か会ったことがある。
伯爵令嬢といえど、こんな格好では信用してもらうのは難しいかもしれない。
けれどもし、クロフト男爵の支援が得られるならリュシアン探しも捗るかもしれない。
レティは頷き、オーラフを見た。
「参加したいです!」
「そうか。ちなみに会食は明日の昼だ。普段着でいいと言っていたから気楽に行くぞ」
気楽に、といっても会食などは久しぶりだ。
なんとなく緊張する。
レティはその日、少しの期待と少しの不安とともに床に就いた。
――――もちろん、この時のレティには……
会食がイーヴの差し金であることも、リュシアンが来るということも……
そして、想像だにしないとんでもない運命がレティを待ち受けていることも……
この時のレティは、知る由もなかった……。