千の夜をあなたと【完】
7.再会
翌日。
レティはオーラフとライナス、そしてオーラフの従者数名とともにクロフト男爵の屋敷へと向かった。
クロフト男爵の屋敷はコルウィンの街の中心部にあり、レンガでできた素朴な雰囲気の建物だ。
建物自体はかなり年季が入っており、煉瓦が色褪せてだいぶ古くなっている。
一行は男爵家の門をくぐり、玄関のホールへと足を踏み入れた。
一行がホールに到着すると、奥から家令が出てきて会食の間へと案内した。
会食の間は一階にあり、華美ではないがあちこちに上質な調度品が置かれている。
入り口は二つあり、ホールから続くドアと裏の廊下へと続くドアがある。
オーラフは上座の方へと座り、ライナスとレティ、そして従者達は下座の方へと座った。
テーブルは広く、20人ほどが座れる広さだ。
皿やカトラリーの数を見ても、恐らく今日の会食には20人ほど出席するのだろう。
テーブルにはパンや肉料理、魚料理などが所狭しと並べられている。
レティはその豪華さに驚き、思わずまじまじと見つめてしまった。
ティンズベリーにいた頃、もっと豪華な晩餐会に出席したこともあるが、そもそもこういう場に出るのが一年半ぶりだ。
レティは昔、エスターに教えてもらった作法を必死に思い出そうとした。
しかしなかなか思い出せない。
もともとあまり興味がなかったからだろうか。
首を捻るレティを、隣に座ったライナスが不思議そうに見つめていた。