千の夜をあなたと【完】
――――そして、数分後。
クロフト男爵が会食の間に姿を現した。
オーラフとライナスが立ち上がり、クロフト男爵に挨拶する。
クロフト男爵は中肉中背の白髪交じりの男で、神経質そうな気弱そうな雰囲気の男だ。
レティも以前に舞踏会などで会ったことはあるが、印象の薄い人だったということしか覚えていない。
クロフト男爵に続き、家族や親戚なのだろうか、幾人かの男性が会食の間へと入ってくる。
しかし人数は6、7人ほどで、こちらの人数と合わせても15人程度にしかならない。
まだ、来ていないお客様がいるのだろうか。
とレティが思った、その時。
その人物は、柱の陰から突然現れた。
陽の光を織り上げたかのような金の髪。
物憂げな青灰色の瞳。
レティは息を飲んだ。
頭の中が真っ白になる。
――――想い出の中の、懐かしい瞳。