千の夜をあなたと【完】
自分は幻を見ているのではないだろうか。
頭が真っ白になり、何も考えられない。
呆然とするレティに、その青い瞳がゆっくりと向けられる。
昔と変わらない物憂げな瞳。
……美しい、その青灰の瞳。
そして、目が合った瞬間。
その青い瞳が、驚愕で見開かれた。
まるで、幻でも見たかのように……。
その青い瞳は大きく見開かれ、瞳いっぱいにレティを映している。
――――時が、止まる。
レティは呆然とイーヴを見つめていた。
見間違えるはずがない。
ずっと心に残っていた面影。
記憶の中のイーヴよりだいぶ大人っぽくなってはいるが、自分がイーヴを見間違えるはずがない。