千の夜をあなたと【完】




しかし瞳が合った瞬間、レティの胸に強烈な羞恥心が沸き起こった。

粗末な木綿の衣服に、海風で痛んだ髪、日に焼けた肌……。

上品な衣服を着たイーヴに比べ、自分はなんて格好をしているのか。


これまで、そんなことを思ったこともなかったのに……。

抑えきれない羞恥心が、レティの胸に突き上げる。


「……っ……」


レティは無意識のうちに立ち上がり、後方のドアから廊下へと飛び出した。


――――何も、考えられない。


なぜここにイーヴがいるのか……

どうして……。


レティはわけがわからないまま、廊下を走り抜け、角を曲がろうとした。

……その、瞬間。



「――――レティ!!」



その声にレティはびくっと足を止めた。

……懐かしい声。


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