千の夜をあなたと【完】
イーヴの目に昏く鋭い影がよぎった。
それは瞬く間に広がり、イーヴの瞳を染めていく。
――――黒い怒り。
レティはその苛烈さと奈落のような昏さに息を飲んだ。
それは瞳越しにレティの心にまっすぐに入ってくる。
体を強張らせたレティに、イーヴは押し殺したような声で言う。
「どういうことだ、それは……」
「……っ……」
「説明しろ。ライナスとは、あの男のことだな?」
怒りに満ちた鋭い声。
レティをじっと凝視する、その容赦のない青い瞳。
レティはその迫力に、じりっと後ろに後ずさった。
それは本能的な恐怖心からだった。
しかしそんなレティの態度に、イーヴの瞳がカッと見開かれた。
「お前……っ!」
言葉とともにイーヴの手がレティに伸びる。
――――しかし、その瞬間。