千の夜をあなたと【完】
ひゅんと横から何かが飛び、それはイーヴの手をかすめ、壁に突き刺さった。
……短剣だ。
驚き、はっと横を向いた二人の目に映ったのは……。
亜麻色の髪を持つ、蒼い瞳の青年――――ライナスだった。
「久しいな。ブラックストンの息子か」
ライナスは言い、素早く二人の間に身を割り込ませた。
目を見開いたイーヴに、ライナスは壁の短剣を引き抜き、冷ややかな声で言った。
「まさか貴様がここにいるとはな。今回の会食、貴様が仕組んだことか?」
「……」
「何の目的かは知らないが。おれの女に手を出さないでもらおう」
ライナスは言い、レティの肩を横から抱き寄せた。
おれのものだ、と示すように。