千の夜をあなたと【完】

8.愛と憎しみ




会食の間に戻ったレティは、ライナスに引きずられるがまま自分の席に戻った。

手や肩が震え、力が入らない。


一体、何がどうなっているのかわからない。

なぜイーヴがここにいるのか。

そして……。


「……っ……」


あの、昏く鋭い怒りに満ちたイーヴの視線……。

レティはイーヴのあんな表情を見たことはない。

思い出すだけで背筋が強張る。


肩を震わせるレティの横で、ライナスも無言で宙を見据えている。

その蒼い瞳にはいつにない鋭さが漂っている。

ライナスは虚空を見据えながら言った。



< 306 / 514 >

この作品をシェア

pagetop