千の夜をあなたと【完】
「セレナ、『ベオウルフ』でもいいですか?」
「私はどちらでも結構です。お姉様の好きな方になさってください」
セレナは美しい翠の瞳を細め、にっこりと笑いながら言う。
……本当に可愛い妹だ。
エスターは頷き、二人を見た。
「それでは、今日は『ベオウルフ』にしましょう」
エスターはその白皙の頬を少し傾け、ぱらぱらと本をめくりだした。
……ほのかに漂う、甘い麝香の香り。
そのどことなく退廃的なムードは貴族のご婦人たちの間でとても人気があるらしい。
レティにはよくわからないが。