千の夜をあなたと【完】
その喪失感は、死別や離別の時より強い。
死別や離別の場合は、二度と会えなくても、自分の中の『その人』が変わるわけではない。
懐かしい、優しい想い出とともにずっと自分の心に残るだけだ。
けれど……。
相手が変わってしまったとき、その人に寄せていた想いが強ければ強いほど……
愛情が、強ければ強いほど……
その喪失感は、別の感情となって胸に押し寄せる。
――――自らの身を焼き尽くすような、怒りと哀しみ。
「レティ……」
激烈な感情がイーヴの心を支配していく。
押さえられない嫉妬と憎しみがイーヴの胸を焼いていく。
絶対に、許さない。
レティをあの男の元へなど、行かせはしない。
あの男の元で幸せになるなど、許さない。