千の夜をあなたと【完】
ティンズベリーにいた頃、イーヴはレティに想いを寄せていたが、レティはイーヴが好きというわけではなかった。
イーヴもそれはわかっていた。
けれど、それでもいいと思っていた。
いつか自分を好きになってくれたらと……そう思っていた。
けれどレティはあの男を好きになった。
――――この一年半。
イーヴが復讐に全てを燃やしていたこの一年半の間、レティはあの男とともに暮らしていたのだ。
あの、精悍で美しい男に身を任せて……
あの男の意のままになって……。
「……っ、レティ……」
黒い感情がイーヴの胸を覆い尽くしていく。
イーヴは無意識のうちに腰に差したクームブランの剣柄に手をやった。
ここに来るまでは、毒を使うことに多少なりとも躊躇いがあった。
しかし今、躊躇いは微塵もない。
あの男を、殺す。
どんな手を使ってでも……。