千の夜をあなたと【完】
9.復讐
会食が始まり、一時間後。
レティはライナスとともにこっそりと会食の間を出た。
廊下を抜け、玄関ホールに出る。
ライナスはレティの腕を掴んだまま足早にホールを抜けた。
レティはライナスに連れられて小走りになりながら、斜め後ろからライナスの顔を見上げた。
――――あの夜と同じ、鋭い瞳。
二人は屋敷の外に出、玄関の前のアプローチを通り抜けた。
そのまま門を通り抜けようとした、その時。
「……待て」
響きのよい、テノールの声がレティの耳を打った。
――――忘れもしない、この声。
硬直するレティの前に、門の陰から金髪の男がすっと姿を表す。
イーヴだ。
ライナスはイーヴの姿を見、くっと唇の端で笑みを浮かべた。
ライナスの蒼い瞳に鋭い影がよぎる。
息を飲んだレティの横で、ライナスは口を開いた。