千の夜をあなたと【完】
「やはり、な。……狙いはおれ達か?」
「悪いが、お前達をここから出すわけにはいかない」
イーヴは言い、ライナスの前へと素早く寄った。
次の瞬間。
鞘走る音とともに赤銀の刃が宙に舞った。
ライナスはとっさにレティを横に突き飛ばし、自身も後ずさった。
――――電光石火の、抜身の一撃。
一瞬の沈黙の後。
ライナスの髪が数本、宙に舞って地面に落ちた……。
レティは呆然とイーヴを見た。
こんな剣技は見たことがない。
ライナスは右手の袖口からすっと短剣を出し、低く構えた。
「なるほど。本気というわけだな。ならばおれも、本気でいかせてもらおう」
ライナスはうっすらと笑い、短剣を振るった。
今のイーヴの一撃に勝るとも劣らない素早さだ。
その剣はイーヴの剣に阻まれ、キィンという甲高い金属音が辺りに鳴り響いた。