千の夜をあなたと【完】



ライナスは言いながら、イーヴの首筋や胸元をめがけて切り込んでいく。

イーヴはライナスの言葉に頬を歪めながら、剣で応戦した。

その剣には怒りが充ち、鋭い剣気が容赦なくライナスを襲う。

しかしその中にかすかな哀しみのようなものを感じ、レティは息を飲んだ。


「血に狂った世界と、辛い現実と……。果たしてどちらの方が幸せだろうな?」


ライナスは何かを悟ったかのように言う。

イーヴはライナスの言葉にくっと唇を噛みしめた。

ライナスの言葉がイーヴの胸を貫いたのがレティにもわかった。

イーヴの剣を受けているライナスには、イーヴの心が見えているのだろうか?

息を飲んでじっと見つめるレティの前で、イーヴの剣がしだいに冴えを欠いていく。


「……っ!」

「剣技を身につけても、お前は心が追い付いていない。そんな雑念だらけでは、事を成すことはできん」


ライナスは言い、短剣をイーヴの胸めがけて振り下ろした。

――――痛烈な一撃。

レティの目の前で、ライナスの短剣が容赦なくイーヴの胸元を襲う。

しかし。


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