千の夜をあなたと【完】
カキンという音とともにライナスの剣は何かに阻まれた。
イーヴの胸元に入っていた何かがその剣を阻んだようだ。
ライナスは驚き、目を見開いた。
次の瞬間。
イーヴの剣がライナスの肩口を襲った。
ライナスはとっさに後ずさったが、それは肩をかすめ、うっすらと赤い筋が走る。
――――たいした傷ではない。
ほっとしたレティだったが、その傷口がしだいにどす黒くなっていくことに気付き、息を飲んだ。
ライナスは変わらぬ速さで剣を繰り出していく。
しかし次第にその動きがどこかぎこちなくなっていく。
逆にイーヴの剣はどんどん速さを増していく。
「お前……」
何回か剣を交えたところで、ライナスは後ずさった。
傷ついた肩をちらりと見、イーヴを正面から見据える。
いつも冴え冴えとしたその瞳は、今、どこか霞んだように精彩が失われている。