千の夜をあなたと【完】


「……お前、毒に手を出したのか?」

「…………」

「さすが天才というところか。お前にとっては毒の調合など容易いだろう」

「……」

「だが、毒は相手の体だけではなく自分の心をも蝕む。お前はその覚悟が……」


と、ライナスが言いかけた時。

イーヴが無言で素早く剣を振りかざした。

レティは背筋が凍るような気がした。


――――それは、無意識だった。


レティはイーヴの剣の前に飛び出した。

ライナスを庇うように、ばっと手を広げる。


「……っ!?」


イーヴは剣先がレティに当たる寸前でかろうじて剣を止めた。

その目は信じられないものでも見るかのように呆然とレティを見つめている。

レティも呆然としたままイーヴを見つめていた。


どちらを庇いたかったのかは、わからない。

ライナスを庇いたかったのか、それともイーヴに殺人を犯してほしくなかったのか……。



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