千の夜をあなたと【完】
あれからどれくらいの時間が経ったのか……。
レティはふっと目を覚まし、辺りを見回した。
見覚えのない部屋だ。
部屋の中は上質な調度品が並んでおり、レティは部屋の隅のベッドに寝かされていた。
「……っ……」
レティは身を起こし、両手で頭を抱え込んだ。
脳裏によぎる、血の記憶……。
目の前で倒れた、亜麻色の髪の青年……。
「……ライナス……」
レティは呟き、部屋の中を見渡した。
――――ライナスはいない。
「……うそ……っ」
とレティが呟いた、その時。
コンコンというドアのノックの音とともに大柄な男が姿を現した。
日に焼けた精悍な顔。オーラフだ。
しかしその目は沈鬱で、レティを見た瞬間、くっと引き攣ったように歪められた。