千の夜をあなたと【完】
「レティ、気が付いたか……」
オーラフは言い、レティの前へと歩み寄った。
その右手はぐっと強く握りしめられている。
オーラフはレティの前に立つと、その右手を差し出し、開いた。
その手の中から出てきたのは……
小さな紐で結わえられた、ひと房の亜麻色の髪だった。
――――その髪を見た瞬間。
レティの脳裏に、あの時のライナスの姿が蘇った。
「……っ……」
嘘だ、信じたくない……。
レティの顔から血の気が引き、みるみるうちに白くなっていく。
オーラフはそんなレティを辛そうな目で見つめながら、言った。
「……あいつの、形見だ。お前が持っていろ」
「……っ……」