千の夜をあなたと【完】



オーラフはレティの手を取り、それをそっと握らせた。


何も、考えられない……。


呆然とするレティに、オーラフは苦しげな声で言う。


「あと、伝言だ。……あいつは幸せだったと言っていた。お前に一生分の幸せをもらった、と……」

「…………」

「きっとあいつは、お前と一緒にいた時が人生の中で一番幸せだったんだろう。……最期、あいつは笑っていた。あいつのあんな笑顔を、おれはこれまで見たことがない」


オーラフは噛みしめるように言う。

レティはその言葉を聞いた瞬間、涙が溢れるのを感じた。


滂沱たる涙がレティの頬を濡らす。

レティの脳裏にライナスの姿がよぎる。


『一人で泣くなと言っただろう。……お前があの男を忘れるまで、いくらでも付き合ってやるから』

『今、お前の傍にいるのはおれだ。これから先、ずっと一緒にいるのもこのおれだ』


ライナスがくれた言葉。

ライナスはいつもレティに優しく接してくれた。

精一杯の真心を、レティにくれた。

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