千の夜をあなたと【完】
10.渇愛
<side.イーヴ>
――――翌朝。
イーヴは痛む頭を押さえながら、ゆっくりとベッドから身を起こした。
イーヴとリュシアン、そしてレティは昨日の晩からクロフト男爵の屋敷に泊まっている。
イーヴは胸元で揺れるペンダントをぐっと握った。
昨夜は、ほとんど寝れなかった。
あれから、550日……。
しかし運命は、昨日、突如急転した。
――――予期せぬ再会。
レティとの再会はもちろんだが、まさかリュシアンも来るとは思ってもみなかった。
しかしリュシアンが生きていたとなると、エスターとセレナの結婚を認めるわけにはいかない。
セレナがエスターに嫁ぐという形であればいいが、エスターが狙っているのはその逆だ。
リュシアンが継承するはずの伯爵位を、エスターが継承することになってしまう。
そして、あの男の死……。