千の夜をあなたと【完】
イーヴはぐっと唇を噛みしめた。
あの男と一緒に居たレティの姿が脳裏によぎる。
ペンダントを引き千切り、壁に叩きつけたい衝動に駆られる。
けれど……。
イーヴはペンダントをじっと見つめた。
ペンダントの裏にくっきりと刃の痕が走っている。
昨日、ライナスの剣で切られた痕だ。
もし、このペンダントがなければ……。
命を落としていたのは、あの男ではなくイーヴだったかもしれない。
「……レティ……」
――――けれど、あの時。
イーヴがライナスに切りかかろうとした時、レティはあの男を庇った。
自分ではなく。
その事実はイーヴの心に氷の杭のように突き刺さった。