千の夜をあなたと【完】
一年半前のあの夜。
レティはあの男の剣からイーヴを庇って怪我をした。
レティの肩に突き刺さった、短剣……。
あの光景は今もイーヴの脳裏に焼き付いて離れない。
しかしそのレティが、昨日、イーヴの前であの男を庇ったのだ。
あの夜、レティを傷つけたあの男を……。
「……っ……」
イーヴの心に黒いものが広がっていく。
それはイーヴ自身にも止められない勢いで、イーヴの心を塗り潰していく。
なぜ……
なぜレティは、自分ではなく、あの男を愛したのか……。
自分がこれほどまでに、魂の全てでレティを求めているのに……。
なぜレティが他の男を愛するのを、神は許したのか?
やはり、神などいない……。