千の夜をあなたと【完】



イーヴは廊下を抜け、レティのいる客室へと向かった。

コンコンと扉をノックする。

しかし返事がない。

イーヴはそっとドアを開けた。


「……レティ?」


イーヴは部屋の中に入り、見回した。

しかし部屋のどこにもレティの姿がない。

イーヴの顔がみるみるうちに青ざめていく。


「……っ」


服も、食事も……手を触れた形跡はない。

服がそのまま、ということは……

レティはオーラフとともに島に戻るつもりなのだろうか。

自分より、あの男との想い出を取るつもりなのだろうか。


自分より、あの男を……。



――――許さない。



黒い怒りが胸の奥底から突き上げる。

イーヴは激情に追い立てられるように馬舎の方へと走り出した。



<***>


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