千の夜をあなたと【完】
イーヴは廊下を抜け、レティのいる客室へと向かった。
コンコンと扉をノックする。
しかし返事がない。
イーヴはそっとドアを開けた。
「……レティ?」
イーヴは部屋の中に入り、見回した。
しかし部屋のどこにもレティの姿がない。
イーヴの顔がみるみるうちに青ざめていく。
「……っ」
服も、食事も……手を触れた形跡はない。
服がそのまま、ということは……
レティはオーラフとともに島に戻るつもりなのだろうか。
自分より、あの男との想い出を取るつもりなのだろうか。
自分より、あの男を……。
――――許さない。
黒い怒りが胸の奥底から突き上げる。
イーヴは激情に追い立てられるように馬舎の方へと走り出した。
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