千の夜をあなたと【完】
その日の朝。
レティは夜明けとともにベッドから身を起こした。
……眠れるはずがない。
ライナスはもういないのだという現実がレティを容赦なく襲う。
レティは目尻に涙を滲ませた。
「……ライナス……」
ライナスとの想い出がいくつも脳裏をよぎる。
ライナスが幸せだったと言ってくれたように……。
あのマン島での生活は、レティにとっても幸せなものだった。
ティンズベリーにいた頃とはだいぶ違うが、ライナスの優しい気遣いと想いに包まれた、穏やかで平穏な日々だった。
けれどもう、ライナスはいない……。
リュシアンは復讐を果たしたのだと、わかっている。
ライナスが父や叔父の仇であることも。
けれど……この身を切られるような辛さは、どうすればいいのだろうか……。