千の夜をあなたと【完】
『命の罪は、命でしか贖えない。……おれも、自分自身の罪はわかっている』
いつかのライナスの言葉。
ライナスはわかっていたのだろうか……。
――――こんな日が来ることを。
レティは両手で顔を覆った。
自分はこれからどうすべきなのか、考えても考えても、わからない。
イーヴはグロスターに戻るだろうし、となるとリュシアンのところに行くべきだろうか。
けれどなぜ、リュシアンはここにいたのか……。
後で事情を聴いた方が良さそうだ。
オーラフとともにマン島に戻ることも考えたが、レティがオーラフの下で特に何かができるわけではない。
恐らくお荷物になってしまうだけだろう。
昨日、オーラフはライナスをコルウィンの沖で水葬すると言っていた。
であれば、せめて船を見送りたい。
花があれば手向けたいが、一文無しの今は花すら買うことができない。
クロフト男爵の屋敷から港までは、徒歩だと一時間ぐらいかかる。
レティは身支度をし、そっと部屋を出た。