千の夜をあなたと【完】
馬車はクロフト男爵の屋敷へと戻り、レティはイーヴに担がれたまま、自分がいた客室へと連行された。
イーヴの力は強く、レティがいくら暴れてもぴくりとも動かない。
部屋に入るなり、イーヴはレティを寝台の上へと放るように投げた。
「……っ……」
レティは思わず寝台の上で後ずさった。
しかしイーヴの手がレティの足を掴み、ぐいと寝台の中央へと引き戻す。
息を飲むレティをイーヴは軽々と組み伏せた。
――――その目に宿る、燃えるような怒りと憎しみ。
レティはその瞳のあまりの苛烈さに、息を飲んだ。
「本当にお前は、馬鹿だね……」
昔と同じ口調でイーヴは囁く。
けれどその表情は鋭く、昔の優しい面影は微塵もない。
「馬鹿すぎて殺したくなるよ。……いっそそうしてやろうか?」
「イーヴ……っ」
「そうすればお前は俺だけのものになる。もう他の男を見ることもない」