千の夜をあなたと【完】




イーヴの言葉に、レティはしばし魂の抜けたような顔で宙を見ていたが、次第にその目に光が戻った。

褐色の瞳に涙を滲ませ、キッとイーヴを見る。


「ライナスは……っ」

「……っ……」

「ライナスは……っ、こんな酷いこと、しなかった……っ」


言葉とともにレティの目から涙が零れ落ちる。

――――真珠のように綺麗な、その涙。

イーヴは息を飲み、呆然とそれを見つめていた。

レティは感情に突き動かされるように、イーヴを睨み上げながら言う。


「ライナスは、あたしがイーヴを忘れるまで、待ってくれるって……。そう言って……」

「……っ……」

「ライナスは、あたしにこんなことしなかった! こんな、酷いこと……っ」


レティは涙目で叫ぶように言う。

イーヴは蒼白な顔でレティを見つめた。


今の、レティの言葉……。


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