千の夜をあなたと【完】
『あたしがイーヴを忘れるまで、待ってくれるって……』
イーヴは胸の中で何度もその言葉を噛みしめた。
それは、つまり……。
「……っ!」
イーヴは目を見開いた。
青灰色の瞳で、食い入るようにレティを見つめる。
怒りと憎しみに満ちたイーヴの心に、レティの言葉は清涼なひと滴のように落ちていく。
それは水面に波紋が広がるように、心に巣食った怒りと憎しみを消し去っていった。
ひとかけらでもいいから欲しいと願っていた、レティの心。
そのかけらを今、イーヴは手に入れた。
レティの視線がイーヴの心に染み込んでくる。
怒りより哀しみに満ちた、褐色の瞳……。
――――昔のレティが、そこにいた。
他人行儀でもなく、敬語でもなく……。
感情を隠そうともせず、じっとイーヴを見つめるその姿。