千の夜をあなたと【完】
――――夜半過ぎ。
レティは熱に浮かされた頭で、茫洋と壁に映る二人の影を見つめていた。
あれからひたすら抱かれ続け、もう何が何だかわからない。
ライナスが死んだことも……
イーヴにこうして抱かれていることも……
全てが、幻のように思える。
レティは焦点の定まらない瞳でぼうっとイーヴを見上げた。
イーヴは愛しげに目を細め、レティの唇にキスを落とす。
……情熱を注ぎ込むような、激しい口づけ。
その甘さに、想いの強さに、胸の奥がきゅっと痛む。
『酷いことしてごめん、レティ。もう痛いことはしないから……』
あの後、イーヴは泣き喚くレティを強引に抱きしめ、再びレティの体に手を伸ばした。
その手は先ほどは全く違い、気遣いと優しさに満ちている。
レティは突然様子の変わったイーヴに驚きながら、その腕に身を任せた。
心と体が疲弊しきっていたので、抵抗する気力がなかった。