千の夜をあなたと【完】
11.引き裂かれた心
――――ひどく体がだるい。
手も足も、首すらも動かせない。
起きなければとは思うが、瞼を開けるのすら億劫だ。
レティはぼうっとした意識の中、睫毛を瞬かせた。
……と。
隣に寄り添っていた温かい素肌が、レティに覆いかぶさるように動く。
唇に落とされる優しい口づけに、レティは身じろぎした。
「……起きた? レティ」
「……」
響きのよいテノールの声がレティの耳をくすぐる。
レティは昨日のことをぼんやりと思い出し、息を飲んだ。
この二日間であまりにいろいろなことがありすぎて、頭の整理が追い付かない。
ライナスは、もういない……。
そして自分は、イーヴに抱かれた……。
――――もう、何がなんだかわからない。