千の夜をあなたと【完】
目を見開いたレティだったが、口の中に広がった甘さに驚き、息を飲んだ。
確かに以前のものに比べて格段に美味しい。
しかしこの甘さは一体何の甘さなのか?
美味しすぎて逆に不安になる。
無言になったレティに、イーヴは目を細めて笑った。
「さ、全部飲んで。この俺が一年半ぶりにわざわざお前のために作ったんだ。残したら許さないよ?」
イーヴは休むことなくスプーンをレティの口元に運ぶ。
レティは親鳥から餌を与えられる雛のようにひたすらスープを飲んだ。
……空腹なのは確かだ。
椀が空になった後、レティは再びベッドに横たえられた。
「俺はちょっと出かけてくるから。お前は休んでて?」
「……」
「もう少ししたら食事と着替えを届けさせるから。いいね?」
イーヴは言い、ベッドから下りた。
うっすらと筋肉がついた、均整のとれた胸板や背中にレティは思わずドキッとした。
――――明らかに昔とは違う体格。
陽の光を溶かしたかのような金の髪も物憂げな青灰色の瞳も、昔と同じなのに……。
朝の陽光の下で見るイーヴは格段に大人っぽく、格好良くなった。