千の夜をあなたと【完】
それから一時間後。
コンコンというノックの音とともに、メイド達が部屋へと入ってきた。
何だろうと思うレティの前で、メイド達は部屋の中央に置かれたテーブルに何やらいろいろ置き始めた。
鹿の肉のリゾットに、兎のロースト、鮭のシチュー。
そして蜂蜜とアーモンドの焼き菓子に、果物のタルト、そしてアーモンドミルク。
どれもレティの好物だ。
唖然とするレティの前でメイド達はさらに廊下から何やら運び入れる。
それはドレスやらチュニックやら、様々な種類の服だった。
どれも上質な素材でできており、上品で、着心地も良さそうな感じだ。
突然のことに驚くレティにメイドの一人がにっこり笑って言う。
「イーヴリオン様からの指示でございます。レティーシャ様が不自由しないよう取り計らえと」
「……え?」
「何か御不備がございましたら、遠慮なくお申し付けくださいませ」
メイド達は一礼して部屋を出て行く。
レティは部屋の中に置かれた品々を呆然と見つめた。