千の夜をあなたと【完】
昼過ぎ。
だいぶ体力が回復したレティのもとをリュシアンが訪ねてきた。
クセのある褐色の髪と緑の瞳は一年半たった今も変わらない。
少し顔つきが精悍になった気もするが、外見の印象は一年前とさほど変わっていない。
リュシアンは少し沈鬱な顔で、レティを見た。
「レティ、あの男のことだけど……」
「……」
レティはぐっと唇を噛みしめた。
沈黙が二人の間に落ちる。
リュシアンは何かを言いたげに口を開くが、言葉が出ない。
きっとリュシアンも戸惑い、悩んでいるのだろう。
ライナスを失った悲しみは大きい。
けれど……。
リュシアンが復讐に走ったのは、当然といえば当然だ。
父と叔父と、従兄弟の仇。
リュシアンを責めることなど、できはしない。