千の夜をあなたと【完】
「リュシアン……」
「……」
「あたし……わかってるから。リュシアンは……当然のことを……」
その先が言葉にならない。
レティはぐっと手を拳に握りしめた。
なぜ、神はこんな残酷な運命を与えたのか……。
リュシアンはしばらくじっとレティを見つめた後、口を開いた。
「レティ。オレは……謝らない。謝ることは、できない……」
「……うん……」
「少し、時間をくれ。……オレの中で、整理がつくまで……」
リュシアンの声にレティは頷いた。
時間が必要なのはレティも同じだ。
このぽっかりと空いた喪失感は、いずれ時が埋めていくのだろうか?
二人はしばらく黙っていたが、やがてリュシアンが気を取り直すように顔を上げた。
レティを心配そうに見、口を開く。
「そういえば。……大丈夫か、お前?」
「え、何が?」