千の夜をあなたと【完】
と聞いたレティに。
リュシアンはなぜか視線をそらした。
その頬はうっすらと赤く染まっている。
「……体」
「……え?」
「イーヴから聞いた。昨日一晩、一緒に過ごしたんだってな?」
「は、はあっ!?」
レティは兄の言葉に思わず仰け反った。
驚くレティに、リュシアンはひとつ息をつき、言う。
「今朝。お前を貰い受けたい、とあいつはオレに言ってきた」
「……っ!」
「あいつの気持ちは昔からオレも知ってる。……でもこの一年半の間で、あいつは変わった。いろんな事情があったからだとは思うが、今のあいつは昔のあいつじゃない」
リュシアンは思慮深げな顔で言う。
これまで見たことのない兄の表情に、レティは思わず呟いた。
「リュシアン……」
「それにあいつは、今や妻子持ちだ。だからオレは、レティの気持ち次第だと返事しておいた」