千の夜をあなたと【完】



と聞いたレティに。

リュシアンはなぜか視線をそらした。

その頬はうっすらと赤く染まっている。


「……体」

「……え?」

「イーヴから聞いた。昨日一晩、一緒に過ごしたんだってな?」

「は、はあっ!?」


レティは兄の言葉に思わず仰け反った。

驚くレティに、リュシアンはひとつ息をつき、言う。


「今朝。お前を貰い受けたい、とあいつはオレに言ってきた」

「……っ!」

「あいつの気持ちは昔からオレも知ってる。……でもこの一年半の間で、あいつは変わった。いろんな事情があったからだとは思うが、今のあいつは昔のあいつじゃない」


リュシアンは思慮深げな顔で言う。

これまで見たことのない兄の表情に、レティは思わず呟いた。


「リュシアン……」

「それにあいつは、今や妻子持ちだ。だからオレは、レティの気持ち次第だと返事しておいた」



< 363 / 514 >

この作品をシェア

pagetop