千の夜をあなたと【完】
リュシアンの言葉に、レティは何も言えず俯いた。
昨日、イーヴがあれだけ怒った理由……。
レティも今はその理由がなんとなくわかる。
イーヴはそれほどまでに自分を想ってくれていたのだ。
レティの心に嬉しさと切なさがじわりと湧き上がる。
「で、だ。今後のことなんだが、オレはウェルシュ伯を頼ろうかと思ってる」
「……え?」
「まだいつにするかは決めてないが……。ウェルシュ伯の庇護のもと、ティンズベリーに戻った方が安全かと思ってな」
リュシアンは思慮深げな顔で言う。
レティは確かにと頷いた。
リュシアン一人でティンズベリーに戻っても、エスター相手に勝ち目はないだろう。
最悪、今度こそ命を落としてしまうかもしれない。
「お前も身の振り方を考えとけ。イーヴのところに行くか、オレと一緒に来るか」
「リュシアン……」
「だが、あまり時間はない。考えるなら早いうちだ。……いいな、レティ?」
リュシアンは言い、立ち上がった。
その雰囲気は前に比べて大分落ち着いている。
レティは部屋を出て行くリュシアンの背を眺めながら、どうしようとため息をついた。