千の夜をあなたと【完】
13.一度でいいから
翌日。
レティはイーヴに連れ出され、コルウィンの南にある狩猟場へと向かった。
狩猟場はクロフト男爵家専用のもので、山三つ分の広大な面積を誇る。
レティも昔、よく父に連れられて狩猟場に行った。
父やリュシアンが狩猟に興じている間、レティやセレナは湖のほとりを散策したり、川で魚釣りをしたりして遊んだ。
あの日々が、今は遠い昔のように思える……。
レティはしんみりしながら辺りを見回した。
二人の他に、ブラックストンから来た兵士数人が同行している。
イーヴは狩猟場に着くと、弓矢と剣を装備し馬に跨った。
「レティ、お前はどうする? ここで待つか?」
レティ達がいるのは小さな湖のほとりに建てられた狩猟用の小屋の前で、イーヴ以外の兵士たちも弓矢や剣を装備して馬に乗っている。
レティはしばし考えた後、こくりと頷いた。
「うん、ここで待ってる」
「……そうか。わかった」
イーヴは言い、兵士たちとともに森の方へと向かった。
レティはそれを見送った後、湖のほとりに歩み寄り腰を下ろした。
少し、ゆっくりと考えたい……。
これから、どうすればいいのか……。