千の夜をあなたと【完】
レティは思わずぽそりと言ってしまった。
そんなレティにイーヴが視線を向ける。
刺すような視線にレティはびしりと固まった。
――――しまった。
と思ったが既に遅し。
イーヴは唇を歪め、皮肉げな笑みを浮かべて言った。
「そう? ……じゃあお前、まずは確かめてきてくんない? 奴らが本当に実在するのか」
「うっ……」
「会ったらついでに似顔絵でも書いてきて。……あぁでも、お前の絵って人と犬の判別すら難しいからな。俺には高尚すぎて理解できない」
「……っ……」
「ま、奴らが人なのかどうかすらわからないから、せいぜい用心しなよ? ……ま、お前も人としては異端の部類だから特に問題ないか?」
「……ううっ……」
「何かわかったらレポートにでもして俺のところに持ってきて。点数つけてやるから」
「うぅ、すみませんでした、もう言いません」
レティは半泣きになりながら謝った。
そんなレティをイーヴがどこか楽しげな瞳で見る。
レティはその視線にがくりと肩を落とした。
……結婚したら、こんな言葉を年がら年中浴びせられることになるのだろうか?
レティにとっては氷眼の狂剣士や緋の魔剣士より、イーヴの方が数倍恐ろしい。
レティは内心で深いため息をつき、イーヴの視線から逃れるように俯いた……。