千の夜をあなたと【完】



イーヴは唇をかみしめた。

やはりレティの心の全てが欲しい。

それが無理なのなら、せめて……

『愛してる』でも『好き』でもいい。

レティの心からの言葉が……想いが、欲しい……。

一度でいいから……。


ライナスを亡くしたばかりで、レティが混乱し傷ついていることはわかっている。

けれどそう思わずにいられない。


「……」


イーヴははぁっと息をついた。

その時。

バサバサっという音とともに小ぶりな鷹が木々の間からその姿を見せた。


「エインセル?」


イーヴが呼ぶと、エインセルはイーヴの腕に行儀よく止まった。

その足に括りつけられたメモを取り、ざっと目を通す。

瞬間、イーヴの目がかっと見開かれた。


「……レティが、いない?」


エインセルはピュイピュイと鳴いている。

イーヴはエインセルの背を撫で、素早く馬に飛び乗った。



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