千の夜をあなたと【完】
レティはぞっとし、両手で自分の身を抱きしめた。
夜の森は冥府の入り口だ。
それに夜は狼などの危険な獣が徘徊している。
ひょっとしたら獣の餌食になってしまうかもしれない。
どうしよう……。
と思った、その時。
「……レティ!!」
森の奥から声が響き、レティははっと顔を上げた。
――――響きのよいテノールの声。
その声にレティは心底ほっとするのを感じた。
「イーヴ!」
「……レティ!」
木々の間から馬に乗ったイーヴの姿が見えた。
その肩には鷹のエインセルが止まっている。
イーヴはレティの姿を見ると、ほっとしたように肩を下ろした。
しかしすぐにじっとレティを見下ろし、口を開く。