千の夜をあなたと【完】
「……一年半経っても。やはり相変わらずだな、お前は」
「それはイーヴもでしょ!」
レティは思わず叫んでしまった。
――――まずい、と思うが既に遅し。
背後でイーヴがうっすらと笑う気配がした。
イーヴは背筋を強張らせたレティの肩をぐいと掴み、耳元に囁く。
「やっぱ生意気だな、お前。あまり生意気だと泣かせてみたくなるね」
「……っ……」
「お前、覚悟してなよ? 今夜……寝かさないからね?」
色を帯びた低いテノールの声が、レティの耳朶をくすぐる。
その声に潜む甘さに腰が砕けそうになる。
ぴしっと背筋を固まらせたレティを、イーヴはくすりと笑って後ろから抱きしめた。